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2001. Oct 緊急> 狂牛病について!

 

9月10日 我が国ではじめて、千葉県の酪農家で飼育されていた乳牛から狂牛病が発見されました。以来連日マスコミや国会等で大きくとりだたされ、その報道振りはチョットおおげさと思えるものであります。学校給食では1700校余りでの牛肉使用の一時停止もあって、消費者の方々も牛肉を手控える傾向にあり、消費量も、この時期芋煮会のシーズンで牛肉消費の多い時期にもかかわらず、例年比30%落ち込んでいます。

一昨年には大腸菌O-157、昨年は口蹄疫が発生しましたが、このような消費の落ち込みはなかったので、それほどと思っていなかったのですが、このような消費の落ち込みと牛肉価格の暴落が続くと、私たち畜産農家は倒産してしまいます。そこで、消費者の方々に狂牛病の事について知ってもらい、国産牛肉は安全であることを認識して頂くために、緊急に 狂牛病について特集してみました。

尚、以下の記載につきましては、Massie 池田のホームページ 狂牛病の正しい知識及び
動物衛生研究所のページから引用させて頂きました。

 

狂牛病とは?

正式には牛海綿状脳症 と呼ばれBSE:Bovine Spongiform Encephalopathy),1986年に英国で発見されました。BSEにかかった牛は脳を冒され、歩くこともままならなくなり死亡します。BSEにかかった牛の脳を顕微鏡で見ると、非常に細かい穴がたくさんあいたように見えます。この様子がスポンジに似ているので、海綿状脳症と呼ばれるのです。

 

発生状況は?

BSEは圧倒的に英国に多く(BSE全体の98%以上)、はっきりとBSEの症状が出ている牛だけでも15万頭見つかりました。その他のヨーロッパ諸国と、カナダなどでもBSEが見つかっていますが、英国に比べて頻度ははるかに低くなっています
日本では、910日に一頭見つかりましたが、その後の生体検査や、疑わしい症状の牛の病理検査をしましたが新たな患畜は見つかっておりません。

 

世界のBSE発生状況 (Last updated 2001/10/10)

国\年 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 発生合計
ベルギー 0 0 0 0 0 0 0 0 1 6 3 9  28 47
チェコ共和国 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2
デンマーク 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 4 6
フランス 0 0 5 0 1 4 3 12 6 18 31 161 103 344
ドイツ 0 0 0 1 0 3 0 0 2 0 0 7 104 117
ギリシャ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
アイルランド 15 14 17 18 16 19 16 73 80 83 91 149 56 647
日本 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
イタリア 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 32 33
リヒテンシュタイン 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2       2
ルクセンブルク 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0  0 1
オランダ 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2 2 2 13 19
ポルトガル 0 1 1 1 3 12 14 29 30 106 170 163 72 602
スペイン 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 65 67
スイス 0 2 8 15 29 64 68 45 38 14 50 33 25 391
英国 7228 14407 25359 37280 35090 24436 14562 8149 4393 3235 2301 1537 318 *181255

*:1988年以前も含む

輸入によるBSE発生状況(頭数)

国・地域/ 例数 発生年
 カナダ      1  1993/11
フォークランド諸島     1    1989
 オマーン     2      1989

以上 動物衛生研究所のページより引用


狂牛病の原因は?

プリオンとよばれる特殊な蛋白が病原体といわれています。プリオンは冷凍にも料理の熱にもびくともしない、たちの悪い病原体です。羊にはBSEとよく似たスクレイピーという脳の病気が200年以上も前からありました。このスクレイピーもプリオンが原因です。英国では、1970年代後半から1980 年代はじめまで、羊の死体を牛のえさにしていました。ですから、BSEの大元はスクレイピーにかかった羊の組織(骨と肉)が混じっていたえさ(ボウンミール:肉骨粉)を食べたために発生したとする説があります。しかし、2000年10月の英国の報告書では、この説は採用されていません。スクレイピーとは全く別に突然変異で牛にBSE型のプリオンが生じたとする説もあります。しかし、いずれにせよ、BSEに感染した牛(発症前の潜伏期間中)の神経組織や内臓を加工した動物性飼料を感染源に広まっていきました。

プリオン蛋白質(スクレイピー関連繊維)の電子顕微鏡写真 Bar=100nm
1nm(ナノメートル)=1/1,000,000,000m 動物衛生研究所のページより引用

 

人間にうつるとどうなる?

BSEが人間にうつるかどうかを考える前に、BSEに似た人間の病気のことを知らなくてはなりません。人間にも海綿状脳症があります。発見した人の名前をとってクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)と呼ばれています。CJDは50才代半ば以降に多く起こります。主な症状は痴呆で、病気が始まってから1年以内に死亡します。CJDもプリオンが原因で起こります。しかし、人間のCJDは動物の肉を食べて起こるものではありません。

スクレイピーは200年以上昔からありました。人間はそれよりずっと昔から羊の肉を食べてきました。でも羊の肉を食べてCJDになった人はいませんCJDの9割は原因不明です。あとの1割前後は遺伝性に起こります。スクレイピーがある国でも、ない国でも、BSEがある国でもない国でも、羊を食べようと、牛を食べようと、世界中どこでもCJDの発生率は同じでした。どこの国でもCJDは100万人に1人の割合で発生します。羊のスクレイピー、牛のBSE、人間のCJDは、すべてプリオンという特殊なたんぱく質を病原体としておこりますが、動物の種によって、プリオンは異なります。この、" 種の壁 "があるため、人が牛を食べてもCJDにはならないとされてきました。ちょうど人間が犬のジステンパーにかからないのと同じように。このように、人間のCJDは、羊や牛の病気が人間にうつってできたものではないとされてきました。

 

英国の対応

それでも、1988年7月になってはじめて、たとえ健康そうに見える牛でも、牛の組織を他の牛の餌にすることを禁止し、牛の間で食物連鎖を断ち切りました。そして,1989年末になってようやく、すべての牛に関して、脳・脊髄・扁桃・脾臓・胸腺・腸といった内臓を人間の食用にすることを禁じました。これらは、もしその牛がBSEにかかっているとすれば、プリオンがたくさんいる可能性のある内臓です。

しかし96年3月、英国政府が、BSEが人間にうつってCJDが発生した可能性を認める発表をしました。特に10例の新しい型の非定型的CJD(nvCJD)はこれまでと非常に異なった症状や脳の変化を示しているので、これまでとは違った新たな原因でCJDが起こったのかもしれない。その新たな原因として、1989年末の牛の内臓食用禁止令以前に、BSEにかかった(潜伏期の)牛の内臓を食べたことによって。 nvCJDになった可能性が否定できないとしたのです。

その後、nvCJD症例と動物実験の両面から研究が進みました。その結果、nvCJDはBSEが人に感染したものであることがほぼ確実になりました。原因として疑われているのは、1989 年末の牛の内臓食用禁止令以前の食べ物です。特に、禁止令以前のハンバーガーなどの肉製品への脳や脊髄の混入が問題視されています。1989 年以後も脊髄の混入についてはかなりルーズで、特に脊椎骨周辺の肉を取る時の操作に問題があり、1995年に至るまで脊髄の混入があった可能性が指摘されています。

 

nvCJDに罹患した人数は?

英国で発生したBSEは18万頭にも上ります。そしてnvCJDによる死者は2001年9月末現在で107人です。フランスにおいては異型クロイツフェルトヤコブ病vCJDの確定診断2例、疑い1例の合計3例が報告されていますが、その他の国々からは発生例の報告はありません。

 

日本での対応

日本にも2000年末までは欧州から動物性飼料は輸入されていたのですから(農林水産省生産局: 第3回牛海綿状脳症(BSE)に関する技術検討会の概要:農林水産省報道発表資料(2001年3月14日)。日本でもBSEが発生する可能性が考えられていました。

しかし、残念なことに日本の農林水産省は、日本にもBSEが発生する可能性があるとしたEU(ヨーロッパ共同体)の報告書に待ったをかけました。 2001年6月、日本で最初のBSEが報告される3ヶ月前のことでした。このEUの報告書は、日本を5段階のリスクで、すでにBSEが確認されているフランスと同じ中間の3と評価しています。つまり、EUの報告書は、日本でBSEが発生してもおかしくないとしていたのです。

9月10日BSEが発見された後、農林省は、患畜の廃棄についてその認識の甘さから適切な指導を怠りましたが、その後、輸入動物性飼料給与の可能性のない30ヶ月未満の牛を除き一時出荷制限をしき、全国に飼養されている450万頭の牛の調査を行いました。また、原因となる肉骨粉の使用を牛に限らず豚、ニワトリにも一時使用禁止の処置をとりました(10月4日)。

そして、10月18日からは、と畜場においてエライザ法によるBSEの検査をして、枝肉の出荷をすることになります。

 

牛肉は安全か?

まずはじめにはっきりさせておきたいことがあります。それは昔の危険性と、今の危険性をごちゃまぜにして考えないことです。英国では、1988年からの防疫対策の結果、BSEの数は94年(月2000頭)をピークとして確実に減っています。また、1989年以降は、プリオンをたくさん含んでいる可能性のある内臓肉を、人間の食べ物に使うことが禁止されました。2000年11月以降、英国以外のEU諸国でもBSE監視態勢が厳しくなっています。

2000年11月にはフランスではわずかな数が出回った可能性を政府が認めました。しかし、フランスにいる1100万頭のうち、2000年11月現在BSEに感染している牛はわずか100頭でした。あなたがそれを食べる確率を考えたことがありますか?そしてBSEに感染した牛の肉を食べれば、確実にCJDになるわけでもありません

日本の役所は確かにずさんですが、BSEが見つかってからの日本での制限はむしろ過剰なほどになっていますから、あなたのいつも利用している肉屋にBSEに感染した肉が出回るという確率はゼロに近いという大前提を納得してください。はるかに危険の少なくなった現在、牛肉、牛由来の製品を一切拒否するというのは現実的とは思えません

 

最後に!

英国で発生したBSEは18万頭にも上ります。そしてnvCJDによる死者は2001年9月末現在で107人です。仮に、これから英国でのnvCJDの死者が現在の10倍の1000人、そして日本でのBSEの発生がフランス並みの100頭になったとしても、日本全体では2人弱の死者しか出ないことになります。小学生でも計算できるこのリスクと、例えばインフルエンザ(日本国内で毎年数千人が死亡)や喫煙リスク(WHOによれば、年間9万5000人もの日本人が直接あるいは間接喫煙で死んでいる!)のバランスを考えて、あなたは自分の生活をどう変えようというのでしょうか?

特に感染症に関して、学問的に根拠のない憶測や不安に基づく行動が、らい病患者の隔離やMRSA保菌者への差別を生んだ事実を、忘れてはいけません。牛肉や牛乳が拒否された結果、まじめに畜産業に取り組んできた人々、加工業、流通業、小売業、の人々が大変な苦しみを強いらています。

もちろん今以上に、生産者、流通業者、加工販売業者、またそれを監督する関係者は消費者に100%安全な牛肉を供給するよう努力しなければなりませんし、消費者も一時的な報道パニックに躍らされること無く、冷静に食の安全について考えてほしいと願うものです。

 

 

管理人のコメント

最近の狂牛病の報道振りはまさに異常と思えるものです。農林省の対応ばかりでなく、牛そのものを悪者扱いして、まるで鬼の首でも獲ったかのようにあおりたてています。まだ、狂牛病が原因でのヤコブ病に罹った日本人は一人として出てない現状で、牛肉を食ったら危ないという間違った風評に、現状では牛肉の消費が30%減少しました。危険性があるのは普通の肉ではなく、普段食べることのない、脳、脊髄、目、回腸などなのです。

この狂牛病騒動で、人間社会での報道のありかたについて便利な面と、そうでないどちらかといえば、一般の人々を煽動してしまう危険な面があることをおもい知らされました。