うららかな春の日差しが、山の森にも入りこんできます。
かわいていた笹の葉も、少しずつ緑色になってきた山の中でした。
、ザワザワと 笹の葉のこすり合う音が聞こえてきます。
「お~~い・でているかあ~。」
「こっちはでてないな~。そっちは~?
わらびやぜんまいなどの、山の幸をとりにやってきた人たちが、互いに声をかけ合っていたのでした。
そして このようすを心配そうに じーっと見守っている黒いかげがありました。
おおきな影と小さい影が、ありました。
熊の親子でした。
「また人間達が来たわ・・。こわいからかえりましょうね。」 お母さん熊はいいました。
「 お母さん、ぼくまだ腹いっぱいにならないよ~ん」
小熊は 不満そうにお母さんにいいました。
「でもね・・。人間は、とてもこわいのよ。なんにもわるいことしていない私たちを見つけただけで、おおさわぎしてつかまえようとするの・・。だから見つからないうちに、お家に帰りましょうね。」
小熊は、冬の間、雪の中のくら~い穴の中で生まれ、初めてお母さんと、食事に出かけてきたのです。
おうちから、お母さんのあとをついてきて、ようやく木の実を食べたばかりでした。
もっと、もっと食べたかったのですが、お母さんのあとについて帰ることにしました。
一つこえ、二つ山をこえると人間の声も、きこえなくなりました。
小熊は、少し腹がへっても、お母さんと食事したことが、とてもうれしくって 穴の中の家に入ると、すぐ眠ってしまいました・・。
次の朝・・。
小熊が目をさましたら、お母さんはいませんでした・・。
どこへいったんだろう?
キョトンとしてあたりを見まわしました。
「きっと、お母さんきのうは、人間たちと出あいそうになったから、お母さんだけで、木の実をとりに行ってくれているんだ」と小熊は、そう思い、ずーっとくらい穴の中で待っていました。
でも、お母さんは、お昼をすぎても帰ってきませんでした・・・。
小熊は 心配になっておかあさんを、さがしに出かけることにしました・・・。
きのう、いっしょに木の実を食べたところまできましたが、お母さんはみつかりません。
もう少し、いってみよう・・。
小熊は、 すこしずつ人の住んでいる方へとおりて行きました。
どのくらい歩いたでしょうか・・?
くたびれた小熊は、ここが、どこかもわかりません。
そして山とはちがった、平らな場所にでてしまいました。
それでも、小熊はお母さんをさがそうと、あたりをキョロキョロみまわしながら歩いていました。
「お母さん・・・。」
すこしずつ暗くなりかけてきて、さびしくなってきた小熊の目の前に見えたのは、小さな小屋でした・・。
中へ入ってみました。 ずーっと,おくのほうまで行ってみました。
たくさんのわらが、つまれていました。
そ~と前足で、触れました。、
やわらかくって、おかさんの胸に、だかれているような感じになりました。
くたびれた小熊は,わらの上に横になると、すぐにうとうととねむり始めていました。
そのころ、外では
「きょう、熊が歩いているのを見かけましたので、みなさん,気をつけてください」
と、スピーカーをつけた自動車が、小熊のいる小屋の前を、大きな音を出しながら通っていきました。
小屋の中では・・・。
「お母さん、おいしいね~♪ ムシャ・ムシャ」
きのうお母さんと、食事をしていた夢を見ながら、小熊は目からは、大きい涙を、たくさんながしていました。
そんな時でした・・・!
「いたぞー!ここにいたぞ・・!」
「むむむっ?眠っているようだな」
「お~う・子どものようじゃな~?」
「子どもか~・・・・。おりに入れておいて、あしたの朝になったら山にはなしたら、よかんべ・・・。」
次の日の朝・・・。
まだ朝陽も登らない山は、朝もやが、かかっていてぼんやりと見えました。
小熊にはまた、きのうのこわさが、からだ中に伝わってきて、ふるえが止まらなくなりました。
そして、なんにもわからないまま、おりに入れられた小熊は、原っぱへと運ばれてきました。
始めて見るこわそうな目が、たくさん小熊を見つめていました。
その時です。
おりの入り口が開かれたと思ったら
「キャン!キャン!」 「う・・!」という犬のほえ声が、小熊の、おしりの方でします。
小熊は、こわくて、ただもうこわくて、どんどん、どんどんと山の方へと走って行きました。
どこをどう走ったのかわかりません・・。
山をいくつこえたかもわかりません・・・。
小さな小川の流れる川に出ました。
汗をたくさんかいた小熊は、休んで水を飲もうとしました。
水を飲んで、ゆっくりしたら、またさびしくなって、お母さんをおもいだしました。
すると、後ろからポン、ポンと肩をたたかれました。
ふり向くと、お母さんです!
「お母さん、どこへいってたの~~?」
泣きながら、きのうのこと、朝にあったできごとを、すべてはなしました。
お母さんは、うなずきながら、話しをきくと
「私の可愛い小熊ちゃん、しんぱいかけてごめんさいね。おかあさんんは、人間が来ることのできない、おおきな森をさがしていたのよ・。その森をようやくみつけたわ~♪」
と、いって川岸の向こうの森を指さしました。
光かがいた大きな森が 親子の熊の前にありました。
おかあさん熊と小熊は、よりそいながら、ゆっくりと川を渡り始めました。
とってもきれいな、天の川のような川でした。
渡りきった熊の親子は、たくさん実のなっている山へと、うれしそうに入っていくのでした。
森の入り口には、「動物たちの森」人間は、はいれません!という立て看板がありました。
夕方になり、一番星が、東の空に光りだしました。
もう少し、暗くなると、おおきな山が、明るくなるくらいのたくさんの星が出てきました。
あのお星樣の下の、どこかの山で、熊の親子は、明日から 人間をこわがらないで、たくさんの木の実を食べることが、できるようになるのでしょうね~~♪
「後記」
最近、熊の出没、被害が相次いでいます。
これって熊や猿ばかりが悪いのでしょうか?
スーパー林道、高速道路、宅地開発と,人間が動物の領域を荒しているようにも見えます。
里山の消滅も原因しているとも思えます。
地球は、人間の為だけにあるものではない!
生物全体の物として考えたいですね。
創作童話子犬になった少年
作 ほ そ や よ う い ち
ここは天国のエンゼル教室です。
かずや君は、今から五年前の小学一年生の時にトラックに、はねられたんです。
そして、そのまま地上では帰ることはできない人となって、天国に召されてきました。
地上では・・・・。
かずや君のお父さん、お母さん、そしてあの時に生まれたばかりの妹、りかちゃんがくらしていました・・・。
「かずやよ~~♪」天使様が,お呼びになりました。
「はい」大きな声でかずや君は返事をしました。
「君は、天国に来てからも、良く学び一日も欠かさないでお父さん、お母さん、妹のことを想い、元気でいられるように祈っていましたね~♪」、
「今日は、卒業式、そのごほうびに、君を地上に戻してあげましょう」
かずや君は、おどろいて天使様を見つめ、うそかと思って、ほほをつねりましたが、
「あいたたた・・・。」ほんとうに痛かったので、大喜びしました。
「かずやよ・・。1つ条件があります。一度死んだ人間は元との体ではもどれません。
何に生まれ変わるかは、地上に戻ってからわかることです。
それでもがまんできますか?」
「天使様。かずやは、お父さん、お母さん、りかにあえるならどんな姿ででもがまんします。
どうか地上に戻してください・・・!」
うれしくて、うれしくてかずや君の涙は、教室からあふれ出して地上へと流れていきました。
そして、その日の夕方は、美しい虹になっていました・・。
かずや君は、その虹を渡って地上に戻ってきました・・・。
と、地上のある街かどです。
ときおりトラックが通り過ぎるくらいのさびしい町でした。
五年前の今日、かずや君は、この角でトラックにひかれたんです。
三人で買い物の帰りに、乳母車を引いたお母さんの前を行っていたかずや君が、ここのまがり角で、トラックと出会いがしらに、ぶつかってしまいました・・。
「ドーーン!キキイイ!」しょうとつした音と急ブレーキの音、お母さんの悲鳴とが重なりあって、かずや君の魂は、あっという間に天国へとたびたったのでした。
かずや君も悪かったのですが、運転手さんも涙を流してお母さんにあやまりました。
お母さんは、それから毎日のように悲しみにくれていましたが、りかちゃんが、大きくなるにつれ元気をとり戻していました。
でも、」かずや君のことは一日も忘れたことはなく、亡くなった日にはかならずここへ、お花や、大好きだったケーキをもってきて、かずや君を想い出していました。
「かずや、きましたよ♪ は~い・大好きなイチゴのケーキですよ~♪」
花と一緒に置こうと思ったその時、小さな子犬が、かけよりケーキをペロリとなめました。
お母さんはビックリして子犬を追い払おうとしましたが、足元にじゃれついて離れようとしません・・・。
それどころか、じゃれついた時に、ケーキが、つぶれてクシャンとなってしまいました。
お母さんは;子犬の頭をポンとたたいて、ようやく子犬は、電信柱のかげに小走りに逃げていったのです。
子犬の正体・・・?わかりますね~~。 そうかずや君だったんです。
五年振りに会ったお母さんと、りかちゃんを見て、自分がどんな姿になっていたのかもわからないでかけよりましたが、「何も知らないお母さんに、たたかれてしまったんです・・・。
電信柱の陰で、大粒の涙を流していたかずや君でしたが、そのあと目にした光景は・・・!
お参りを終えて帰ろうとしていたりかちゃん目がけてバイクが走ってきたのです!
子犬はわれを忘れてバイク目がけて走りました!
バイクはあわやというところでとまりました!
リカちゃんは、かすり傷一つおわないですみました。
バイクの少年も転びしましたが、けがはありません。
そして子犬は・・・!?
子犬も無事でした♪
お母さんは、りかちゃんを抱きしめ、けがが無かったのを確かめると、子犬もしっかりと抱き上げてから「ありがとう♪ありがとう♪」と何度も子犬の頭をなでました。
五年振りのお母さんの暖かい胸の中・・・。
一本、一本触れて、なでてくれるお母さんの指・・。
かずや君は、今は幸せで一杯でした。
それから・・・・・。
かずや君は、自分が、かずやだとも打ち明けられない悲しさはありましたが、
家族と会えたうれしさをおみやげに、また虹を渡って天国に戻り、エンジェル学校の中学生になっていました・・・。
とこちゃんと
ほそや よういち
小学校二年のトコちゃんとみつお君は、なかよし友達です。
学校の帰り道には、トコちゃんのお気に入りの原っぱがありました。
二人は、その日もいっしょに帰りました。
もう春も終わろうとしている野原は、たんぽぽも黄色い花から、白い綿ぼうしにかわり、ほそい糸のようにつらなって、ふわりふわりと空にむかって、とんでいきます・・・。
そしてクローバーの葉についたまーるいぼんぼりはたくさん顔を出して、まるで首をふりふりお話ししているようです。
もんしろちょうも,れんげの花のみつを、吸いにやってきました。
「みっちゃん、クローバーの、お花たくさんつんで来てくれる~。」
白いクローバーの花は、丸い輪になると、まるでダイアモンドが、光ってかがやくように見えてきます。
「わたし、みっちゃんに王子様のかんむり作ってあげるわ~♪」
「とこちゃん、きて きて・・!」
みつおくんがおおきな声でトコちゃんをよんでいます。
トコちゃんは、不思議そうな顔をしながら、みつお君の所へかけよりました。
そこは流れのゆるやかになっている、小川のすみっこのほうでした。
「そこ、そこ見て・・・・。そこだよ~~~! 」
指の方向をたしかめるようにして見たトコちゃんは、いっぴきのはちが、小川のはしのほうで、おぼれるようにして、羽をパ
タパタさせているのをみつけました。
「かわいそう~~・助けてあげましょうね~~。」
トコちゃんは、まわりを見わたして、ようやく見つけた棒きれで小さな身体を長ーく伸ばしながら、蜂を助けてあげたのでした。
すると、みつお君が「いいよ~。そんな事しなくても・・。」と、いいました。
トコちゃんは「かわいそうじゃない~・このままにしていたら、流されていって死んじゃうよ・・・
するとみつお君は
「蜂はさーさすだろう・!助けたら、羽をわかしてから、ぼくたちをおそってくるかもしれないよ!」
と、いって、助けようとしませんでした。
しばらくしてから・・・。
「よかったわね~・」
トコちゃんは、そう言って棒のはしから、そ~っと蜂を野原に戻してあげました。
蜂は喜んではいあがると「ブルルン」と羽を、二度三度ふるわせ草むらの方に、飛んでいきました。
それから数日後のことでした。
今日は楽しい学校の遠足です~~♪
お弁当も、お母さんが作ってくれた、おいしい卵焼きが入ったったお弁当です。
お陽様も、みんなの元気な姿にうれしくなり
暖かい日差しを送って見守っています。
カッコウ鳥が「カッコウ♪ カッコウ♪」と鳴きながら、ようこそ森へとむかえてくれました。
「ラン・ララララ~~ン♪」
みんなの足音が、リズムになって軽快に野原に、ひびきわたりました。
と、その時でした!!
「蜂だあ!蜂が・・・!」
「こわいよ~~!」
元気よく一番前を歩いていたみつお君が、顔を青くして頭をかかえてにげてきました。
みつお君は、半分泣きべそをかきながら、地面にしゃがみこんでしまいした。
先生は「頭を低くしていなさい!」と言いました。
みんなは先生の言うとおりしばらくじい~っとして動きませんでした。
頭のうえでは、蜂の集団がブ~ン・ブ~ンと音を立ててまわっています!
トコちゃんは、列のまんなかあたりにいました。
でも、みんなが少しずつうしろにさがってきたので、いつしか列の先頭になっていました。
蜂が近づいてきます。
トコちゃんもにげようとしました。そして先頭の蜂を チラッとみました。
大きな目を見開いて、向かってこようとしました。
「あ~~っ・・。もう駄目!」
その時です。 先頭の蜂もトコちゃんをみました。
ほんの数秒間、わずかの時間でしたが、トコちゃんと蜂の目が合ったのです!
「アッ!あの蜂!見覚えある!」
そして先頭の蜂も、見覚えのある女の子の顔をすぐ思い出しました。
あの時に助けてもらった、かわいい女の子だとすぐわかりました。
おそってきた先頭の蜂は、集団のリーダーだったのです。
リーダーのかけ声で、蜂の攻撃は止まりました。
そして、トコちゃんたちの列から、蜂は一匹もいなくました。
「あれ~~?蜂がいなくなったよ・・。」
みんなが頭をあげたころは、また小鳥の鳴く静かな森に戻っていました。
みつお君も、まわりに蜂がいなくなったのを確かめると、ようやく立ち上がりました。
みんな不思議がりましたが、誰もけがをしなかったので、先生も大喜びです。
「ここは蜂の巣あるらしいから、静かに歩きながら少しまわり道して行こう」
先生と一緒に遠回りにはなりましたが、目的の場所に着いて、おいしい弁当を食べて、たくさん遊び、楽しい、楽しい遠足を終えて帰ってきました。
その日の夜・・・。
トコちゃんは、いつも書いている日記帳に「蜂さん。あ、り、が、と、う」と、だけ書いて寝ました。
夢の中では・・・・。
きっとトコちゃんと、あのリーダーの蜂が野原いっぱいにかけまわって遊んでいるのでしょうね♪