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2002. Dec BSE騒動の残したもの

 

 今年の牛肉流通情勢はまさに大きな転換期といえる年でありました。
昨年のBSE発生による騒動から産地偽装問題が明らかになり、消費者からの強い不信感から暗黙の不買運動と云えるような現象が起こり、相次いで大手食肉流通業者が倒産に追い込まれる結果となりました。
もともと、牛肉の流通経路は複雑で、子牛生産農家、肥育農家、家畜商、農協、と殺場、卸問屋、輸入貿易商社、大手食肉流通業者、ハムなどの加工業者、スーパー、ホテル料亭などの外食産業から一般小売店まで、その経路は図式に書き表せないほどに絡み合っています。
 特に、食肉はと殺という過程があって、一般人には踏み入れ難い一種の特別社会でしたので、BSE発生以前にはマスコミに取り上げられることはまず無かったですし、監督省庁でも、病原菌などの安全性に問題がなければ当らず触らずの対応だったようです。また、保存流通するには冷蔵庫が必要で、なかなか表面に出難い食品でしたので、それに携わる人達の暗躍し易い恰好の業種でもあったのです。

 ところで、食肉偽装発覚の直接の発端は、関係者の内部告発だと言われております。
まあ、検査技術の進んだ現代は、DNA鑑定まですればすぐ分かることですが、実際、ある高級食材を扱うデパートで松阪牛として売られていたものが、雌牛しか松阪牛として認めていないのに、DNA鑑定の結果雄牛だったことが判って、不正がバレたケースがありましたが、ふつう自分が買った肉の産地が表示と合ってるかどうかと、DNA鑑定に持ちこむ人はないでしょう。本当なら、食肉の安全性を監督している保健所が抜き打ちで検査して欲しいのですが、現実は難しいようです。ですから内部告発がなかったら、この問題はまだまだ闇の中だったのではないかと思います。

元来、日本では自分がお世話になっている会社を告発することは、裏切り行為だとか、義理人情に反すると思われて、なかなか出来ないことですが、最初に内部告発した人こそ勇気のある行為と称えられるべき人物と思うのですが、実際は偽装に加担したということで、有罪になったそうです。
アメリカ
のタイム誌では、パーソンズ・オブ・ザ・イヤー(今年最も英雄と称される人物を投票で選定する賞)」に、12月22日その選定が行われ、巨大総合商社「エンロン社」と「ワールドコム社」の不正経理を内部告発した女性副社長と、同時多発テロ事件を起こした反政府組織アルカイダの危険性を重要視していなかった事を内部告発した連邦捜査局(FBI)女性職員3人に決定したと報じています。
米国で「ホイッスル・ブロウアー」と呼ばれる内部告発者。同誌の世論調査では、59%の人が「ヒーロー(英雄)」であると考え、73%がもし職場で不正なことを目撃すれば「自分も告発する」と答えているそうです。

このように、常に社会悪は正さなければならないとするアメリカの精神に学ぶことは、民主主義を守ることであり、国の仕組みを改善することだと思いますが、皆さんはどう思いでしょうか?

 

 消費者の食にたいする安全性の関心度は過去に例がないほど高まり、食肉にとどまらず、野菜や果物などあらゆる食品に波及しております。
おりしも、輸入農産物の残留農薬が問題となる中、地元山形産のくだものから使用禁止の農薬成分が検出され、この秋の大きな問題となりました。輸入農薬を使用禁止と知って販売流通した業者は、法廷裁判の渦中にありますし、指導する立場である県知事をはじめ、県の農林関係指導者は減給などの処分になるなど、また、使用した農家では不使用の確認書を書いたものの、あとで残留が発覚し自殺まで追い込まれた者もありました。
二度とこのような悲劇を繰り返さないようにするためにも、それぞれの立場で、不正は常に正すという信念を持つことが大事だと思います。

このように、食品にたいする安全意識高揚の社会現象を引き起こしたのはまさに、BSE騒動が原点といってもいいでしょう。
得てして経済的な面だけにとらわれて、善悪の判断が鈍くなってきている昨今、日本社会を見直すきっかけになったことは、このBSE騒動がまんざら最悪な出来事ではなかったようです。

 

個体識別システム事業

BSEの発生ルートの解明のためと、牛が生まれてから肉になるまでの経歴を明確にするため、今年3月より全国統一の個体識別管理システムが発足しました。誰でもアクセス出来る検索システムということで、牛肉のパックに貼られている固有の番号を記入すれば、その牛の生まれてから肉となって小売店までの経歴が検索出来ます。

尚、現在のところ、生年月日と、子牛生産者名、肥育者名のみ表示になっています。

 

管理人のコメント

狂牛病発生から一年が経過しましたが、牛肉の消費も狂牛病騒動以前に回復し、価格もチョット異状と思えるほど高騰しています。
行き過ぎた相場はその反動が心配されます。本当は、日本国中誰でも食べれる価格で提供したいと思っているんですが・・・。

久々の更新です(^^;  myPCもやっと回復しましたので、更新の機会を増やしていきますよ〜。